むかしむかし、神五郎と妻の「オキタ」という人が住んでおっての。
オキタは、とても色の白い美しい女じゃった。
ある日、神五郎が仕事に出かけた留守に、家は賊におそわれてしもての、家の宝物といっしょにオキタも連れて行かれてしもうたんじゃ。
きれいなオキタがさらわれたので、神五郎はいっしょうけんめいさがし歩いたんよ。そしたら、賊の島にとらわれていることを、風のたよりに聞いたんじゃ。
そこで神五郎は、大急ぎで賊の島へやっていった。その島には、お城のような大きな建物があっての、がんじょうな扉があったんじゃ。神五郎は、用心しながらの、一の門の扉を開けると、とたんに赤鬼がなぎなたで切りかかってきた。神五郎は風のように逃げたんじゃ。二の門をくぐると、青鬼が、炎をぶっかけてきたが、神五郎は、それをものともせず、風のように走り抜けたけん無事じゃった。
三の門をくぐると、大きなこっとい牛が、角をふりたて、つっかかってきた。神五郎は、もうどうにもならんと思って、逃げ回りながら死にものぐるいの声で、「オキタ、オキタ!」と、叫んだそうじゃ。
そうしたらの、オキタに聞こえての、オキタが駆けつけてきて神五郎を助けたんじゃ。
けんど、どろぼうたちが、もうすぐ帰ってくるんでの。
オキタは、気が気でなかった。そこには池があっての、いくらかくしても、よその人が一人きたら、蓮の花が一つ咲くようになっていたんじゃ。
いよいよどろぼうたちが、えものを引っさげて帰ってきた。オキタはあわてて神五郎を炭俵の中に隠したんじゃが、どろぼうのかしらは、池の中の蓮の花を見て、だれか、この城にしのびこんでいることに気づいての。
「オキタ!だれかここにやってきたのか、どうじゃ」
オキタはばれては大変じゃとおもい「わたしのおなかに子ができたんじゃ」
「うちでは子ができると、お祝いをしてくれるのよ」と言ったら。
どろぼうのかしらは、早速お祝いの支度をした。
その晩、どろぼうたちは、酒盛りを始めた。オキタは、どろぼうのかしらに
「うちでは、お祝いにようけことお酒を飲んでくれるのじゃ」と言うて、じゃんじゃんお酒を飲ませたので、どろぼうたちは、すっかり酔いつぶれてしもた。
そのすきに、神五郎とオキタは、どろぼうたちを退治しての。
飯炊きたちを助け、宝物もどっさり持って帰ったとさ。
めでたしめでたしじゃ。 |